第299回 長野県眼科医会集談会・第58回信州臨床眼科研究会
一般講演:急性の経過で片眼に隅角蓄膿・硝子体混濁・眼底黄白色隆起性病変を来した汎ぶどう膜炎の2例
信州大学眼科 熊崎茜、松田順繁、村田敏規
信州大学医学部医学科 荒巻奏
信州大学医学部医学科 荒巻奏
ぶどう膜炎には様々な分類のしかたがあるが、感染性ぶどう膜炎は片眼、自己免疫性のものは両眼発症が多い。今回我々は、片眼に発症し短期間で増悪したぶどう膜炎でありながら、互いに原因や治療法が大きく異なる2症例を経験した。
1例目は舌癌治療後であり、器質化肺炎にてステロイド長期内服中の55歳男性で、左ぶどう膜炎に対し前医でトリアムシノロンテノン嚢下注射が施行されたが、当科初診時には隅角蓄膿、雪玉状硝子体混濁、眼底には出血混じりの黄白色隆起性病変を認めた。全身所見では血中β-Dグルカンが高値であった。経過や所見、全身背景から真菌性眼内炎を強く疑い硝子体手術予定であったが、肺炎増悪にて永眠された。
2例目は出産後間もない32歳女性で、児にカンジダ血症が認められた。同じく左隅角蓄膿、数珠状硝子体混濁、眼底隆起性病変を認めたが、全身検査所見は正常で、前房水PCRにても感染源は同定されなかった。実際に抗真菌薬への反応もなく、ステロイド内服による診断的治療で改善した。
1例目の隆起性病変は脈絡膜由来であったのに対し、2例目は網膜表層に限局していた。内因性真菌性眼内炎では真菌が血行性に網脈絡膜血管に播種し、硝子体腔内へ突出していく病変を形成するが、初期では滲出斑など病変が網膜内に限局することも多い。また、健常成人に発症した感染性ぶどう膜炎の自験例もある。
免疫能低下の背景がなくとも所見から感染性ぶどう膜炎が否定しきれない限りは、常に感染症治療を想定し、ステロイドによる診断的治療を行うにしても安易なテノン嚢下注射は避けるべきである。