第254回長野県眼科医会集談会 特別講演

糖尿病黄斑浮腫

九州大学大学院医学研究院眼科分野 教授 石橋 達朗

 糖尿病網膜症の病態解明と治療は、現在の眼科学におけるもっとも重要な問題の一つで、多くの取り組みがなされている。しかしながら、網膜症は現在においても我が国における後天性失明の主要原因となっており、日々の診療で我々を悩まし続けている。2014年の「国民健康・栄養調査結果」によると, 生活習慣病の代表である糖尿病が強く疑われる人は約950万人, 可能性を否定できない人(予備軍)は約1100万人で合わせると約2050万人である. 1997年の調査開始以来、初めて減少に転じたものの依然として多くの患者が糖尿病に罹患している。
  病態では血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)の関与が重要であるが、他の因子の関与も推定されている。  また治療における最近の話題は抗VEGF薬である。VEGFは血管透過性亢進や血管新生を誘導し、網膜症の病態に関わっていることはよく知られている。その中でも糖尿病黄斑浮腫、増殖糖尿病網膜症、さらに血管新生緑内障はVEGFがより病態に深く関与し、重篤な視力障害を残す場合がある。
  本講演では糖尿病黄斑浮腫にスポットを当て、その病態解明や治療の最近の話題について述べる。