第249回長野県眼科医会集談会 特別講演

眼瞼腫瘍とマイボーム腺疾患  -黒いもの、赤いもの、白いもの、そして黄色いもの-

九州大学病院特任講師 吉川  洋

 眼瞼は、皮膚粘膜筋層に瞼板という硬組織、汗腺粘液腺副涙腺、そしてマイボーム腺という脂腺をもつ複合臓器です。ここに、感染性炎症、非感染性炎症、嚢胞、良性腫瘍、悪性腫瘍が発生するため、眼瞼に腫瘤や腫脹をみたとき我々は、実は非常にたくさんのことを考えないといけません。
 患者の眼瞼に何がおこっているのか? 我々眼科医がそこで手がかりにするのは、まず病変の「場所」でしょう。火のないところに煙はたたぬ、「マイボーム腺のないところに霰粒腫はできない」というと当たり前ですが、その他の腫瘍性疾患も特有の発生部位をもっていることを知っておくと役立ちます。
 もうひとつ、今回は眼瞼疾患の「色」についてお話ししてみます。赤い色は毛細血管拡張すなわち炎症を、黒というと普通メラニン色素を考えますが、出血による黒も眼瞼腫瘍では大事な所見です。脂肪は通常黄色いものと思われていますが、脂肪が白という色で我々の眼前に登場することも少なくありません。
 「眼瞼腫瘍で脂腺癌をみのがさないために」というおきまりの命題も含めて、漫談調にお話しさせていただきます。どうぞおつきあいください。