第243回長野県眼科医会集談会 特別講演

角膜感染症の診断と治療

ルミネはたの眼科 秦野 寛

 眼感染症の診断は七五三で整理できる。七感染部位、五種微生物、三期検査である。七感染部位は@眼瞼、A結膜、B涙器、C眼窩、D角膜、E強膜、F眼内、五種微生物は@ウイルス、A細菌、Bクラミジア、C真菌、D寄生虫、三検査期は@検鏡、A培養、B血清である。感染症は捕り物帳である。検鏡は現行犯逮捕、培養はアリバイ、血清は間接証言であろう。起炎菌の最大の根拠保証は検鏡による。
 今回はこの七五三をベースに、角膜感染症の位置付けを行い、診断と治療を整理したい。角膜感染微生物はクラミジアを除くウイルス、細菌、真菌、寄生虫(アメーバ)の4種である。これらについて臨床像を基本にした、検鏡、培養、血清の3つの検査の使途比重を考えたい。中でも検鏡は、無関係そうなウイルスを含めて、全微生物で重要な情報が得られ、as soon as possible原則の感染症では即時診断として最も重要である。JobとHobbyを兼ねる(Jobby)検鏡を紹介したい。
 ウイルス感染ではHSV、VZV中心に、その鑑別を臨床像と血清抗体価から考え、HSVについては最近開発された抗原検索キットに触れる。細菌ではCL関連の緑膿菌、セラチアを中心に、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌の鑑別の重要性を治療的側面から強調したい。真菌は都市型の酵母菌感染と農村型の糸状菌感染の区別が全てである。アメーバはヘルペスと酷似する。ヘルペスに胸を借りてその鑑別特訓を試みたい。