第16回 長野県眼科フォーラム 特別講演

東日本大震災における岩手県眼科医会の対応・活動報告

日本眼科医会常任理事  岩手県眼科医会災害対策部  高橋 和博

 岩手県は、総面積が四国4県を合わせた面積に匹敵するほどの広大な県土を有します。三陸海岸といわれる岩手県沿岸部は、市や町が20〜30kmごとに点在します。そこは例外なく太平洋に流れ込む河川の開口部で、山と山に囲まれた狭い平地に都市機能が集中した地形を有しています。ここに平成23年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9の大地震が襲いました。その約30分後には大津波が襲来、さらに火災が発生した地域もあり、ライフラインはことごとく寸断され、生活場所、生活物資、交通手段を同時にしかも一瞬にして失うという壊滅的な被害を受けました。およそ経験したことのない自然災害の猛威の前にほとんどの沿岸住民はなす術を失い、数カ所の避難所で幽閉同然の暮らしを余儀なくされました。もともと医師の絶対数が不足している医療過疎地域を襲った今回の津波災害は、アッという間に沿岸地域における眼科医療が崩壊しかねない状況をもたらしたのです。岩手県眼科医会はいち早く災害対策部を立ち上げ、沿岸部の眼科診療の確保と眼科医への支援を試みました。しかし、すべてが初めての経験であり、様々な情報を取捨選択しながらの対応や支援は試行錯誤の繰り返しであり、県央部から約120km離れた被災地の地理的条件は、震災後の対応や支援活動に様々な困難をもたらしたのです。その時、何が重要で、何を優先すべきだったのか?誰が何を行うべきだったのか?我々が日々自問自答しながら探し続けた答えを見つけ、今後の災害対応への提言に役立てるためにも、我々が行った活動の記録を示すとともに検証を試みたいと思います。